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April 23, 2005

ネット検閲がもたらす究極の監視社会

インターネットは、民主主義を発展させる強力なツールなんだと素朴に思っていた。直接民主制が実現したり、伊藤襄一氏が提唱する「創発民主制」(pdf)という概念に表されるように、議論やコミュニケーションの質も量も高まって社会に新しい変化と自由をもたらすんじゃないか。国際社会においては、食うにも困ってパソコンどころじゃない北朝鮮はともかく、ネット人口が1億人を超えたという中国の独裁体制なんて放っておいても崩壊するだろう。そう無邪気に思っていた。

だが、「中国の嘘~ 恐るべきメディア・コントロールの実態~」(何清漣著・扶桑社)に描かれた中国のネット検閲の実態を知り、そんな幻想は一気に吹き飛ばされた。自由をもたらすどころかインターネットが独裁国家の手に渡ると、こんなに恐ろしい監視社会が生み出されるのか。ジョージオーウェルのSF小説も顔負けの背筋の凍る世界だ。反日デモもこうした背景の理解なしには語れない。メディア論や中国に関心のある人は必読の書だと思う。

例えば「雅虎中国(yahoo!China)」のすべてのチャットルームとフォーラムにはひとりの「ビッグ・ママ」がいる。すなわち検閲チームの責任者である。彼らは随時、「政治的に正しくない」評論を削除するほか、さまざまな手法で自由な討論を阻止している。例えば、ネット討論の場に誰かが「中国において、我々は全国レベルでの多党選挙を実施しなければならない」と書きこんでも、反応は全くない。それはなぜだろうか。この発言はヤフーのお目付け役によって掲載が阻止されたのである。その後、とても「フレンドリー」な電子メールがうやうやしく送られてくる。そこにはあなたの不穏な言辞は「冷却」した方がよいという提案が記されている。

中国のヤフーで「台湾独立」を検索しても何も出てこない。これはヤフーがいくつかのキーワードを検索禁止にしているからであり、「法輪功」や「中国民主」でも結果は同じである。

政府批判やチベット、新疆ウイグル、台湾独立、法輪功などに少しでも触れた言論はあっという間に摘発される。その「事件解決」の速さは凄まじく、金盾プロジェクトの有効性と国家安全部門の勤務効率の高さには驚かされるばかりである。

「金盾プロジェクト」とは、2001年から稼働し、2008年に完成予定の究極の監視システムで、

フィルタリングする必要のある海外の情報サイトをすみやかに発見し、国内の「不良」情報コンテンツもすみやかにブロックし、さらに安全検査を実施し、犯罪行為に対して現場で調査、証拠調べ、鑑定を実施するというものである。

その最終目標は巨大なオンライン・データベースと監視ネットワークの統合であり、そのために音声と顔認識、CCTV(監視カメラ)、スマートカード(ICカード)、クレジット記録、インターネット監視のテクノロジーが導入されている。中国政府が構想しているのはデータベース駆動型の全国規模のリモート監視システムであり、全国―地域―現地の安全部門当局を結ぶ包括的な監視ネットワークである。

つまり、単に反政府的な言論を検閲するだけにとどまらない、「壮大な人民管理データベース」とそれに連動した「治安維持システム」。ゲシュタポが現存していたらノドから手が出るほどうらやましがっただろう。日本の盗聴法や人権擁護法案がかわいいヒヨコに思えてくるほどだ。

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April 20, 2005

中国デモ議論をスッキリ整理

このサイトすごいなー。かなりの力作。

「中国の反日デモを見た日本人の感想樹形図」(おいらブログ)

中国のデモをめぐるブログ界での議論や感想をツリー上に分類している。
これを眺めてるだけでかなり頭がスッキリする。
簡単に書いているように見えて、カッコ内のネーミングがかなり的を射ていて笑える。

この作者、これ作るのにどれだけ時間かけてるんだろう?

あと、ここの詳細レポートも面白かった。

「4.17中国大使館前騒動物見遊山的見聞記」(いのうぇブログ)

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April 14, 2005

目を皿にして新聞読んでる?

(ガ島通信さんのとこに寄せたコメントの使い回しベースで恐縮ですが)

ガ島通信さんが「新聞ヨ(4)ン(6)でる??」というエントリーで、
世間で実際、新聞はどれだけ読まれているの?
っていう問いかけをしている。
新聞を「とっているのと、読んでいるのとは違う」という指摘は重要だと思う。

自分は仕事上、自宅で何紙か取ってるけど、この仕事をやっていなかったら多分1紙も取らないと思う。新聞って朝刊なら30ページ位に何百もの記事が載ってるけど、目を通す記事は、(自分の担当に直接関係するものを除けば)10もないと思う。中には隅から隅まで新聞を読む人もいるのだろうが、そういう人は少数派だろう。つまり我々記者が一生懸命記事を書いても、ほとんどが読者に読まれないままチリ紙交換に出されてしまう。

前のエントリーでも同じことを書いたけど、老若男女すべてを「お客さま」と想定した紙面づくりをしているから、逆に「誰にとっても中途半端」な情報しか載っていない。
だいたい新聞というアナログなメディアでは、視聴率のような、自分の書いた記事が実際にどれだけ読まれたかを客観的に測定するすべがない。正確なニーズを図れないから、有効なマーケティング戦略をたてようもない。

同じアナログメディアでもマンガ雑誌なんかは、読者アンケートの人気結果を基に、かなり露骨な競争原理を編集にもちこんでいて、少年ジャンプなんかは本当に「勝ち組」しか生き残れないほど競争が激しいという(自分が子供のころの話なので、今もそうなのか知らないが)。

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April 11, 2005

ブロガー、国境超え政権揺るがす

ブログ先進国のアメリカでは、もはや現実の政治においてブログの影響力が無視できない状況になっているが、そのアメリカの地方都市ミネアポリスに住むサラリーマンが、国境を越えてカナダの自由党政権を揺さぶるほどの「特ダネ」を掲載して話題となっているようだ(

話を要約すると、カナダでは、与党の自由党がマネーロンダリング的に公金を流用した疑惑が浮上しており、その捜査の過程で、非公開で行われた公聴会(正確には法廷での傍聴は自由だが、その内容をマスコミが報道することを禁じた)の内容をこのブロガーが関係者から入手し、ネット上に公開してしまった。

公聴会の証言には、マーティン現首相の側近とスキャンダルを結び付けるような重大な内容も含まれ、カナダ国民が知らされていない内容がアメリカのブログに掲載されたことで、同サイトにはアクセスが殺到し、1日で40万ヒットも記録したという。

結局、カナダの判事は報道禁止令が無意味になったということで、その数日後には禁止令を解除。その後はマスコミが堰を切ったように証言内容を基に現政権の暗部を追及し、マーティン首相は退陣の危機にもされされつつあるという。

このブロガーはNewYorkTimesの取材に対し、「政治家もメディアも知っているのに、カナダ国民だけは暗闇の中に取り残されている。こんな報道禁止令は自由主義社会の自滅行為だ。これはブログにとって歴史的な瞬間だ」と答えている。

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April 08, 2005

詐欺的トリックにだまされるな

clip_image002日本政府の意思決定システムはどうしてこうも腐っているのか。

神保さんのブログが指摘していたことだが、官僚の詐欺的なトリックによって、BSE対策の方向性が、専門家(食品安全委員会内のプリオン専門調査会)の指摘とは全く正反対にねじ曲げられようとしている。

ごく簡単に言えば、調査会は「全頭検査は続けるべきだ」と総体的に言っているのに、官僚は「そんなことはあんた達に聞いてない」ということで自分たちに都合のいい結論(「20ヶ月以下の牛は検査対象から外しても問題ない」)を抜き出し、それを実行に移そうとしている。

BSEの専門的な話はよく分からないが、問題なのはあいまいかつ無責任な意思決定システムのあり方だ。

まずは相も変わらぬ外圧に弱い姿勢。
ブッシュから小泉首相に直接電話がかかってきたり、怖い顔のライス国務長官が来日して「輸入を再開せよ」とニラまれた途端に輸入再開方向に舵を切り始めた。

政府はこれまでずっと「科学的知見に基づいて判断する」と、食品安全委員会の意見を尊重する姿勢を見せながら、実際には上記のような欺瞞を用い、科学者の良心を無視しようとしている。

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April 04, 2005

ブロガーよ、情報の司祭を打ち倒せ!

Martin_Luther一度自分なりのブログの歴史的意義をまとめておきたい。

このブログを立ち上げて、一番最初に書いた「キムタクって本当に存在する?」という変な題名のエントリーで、当たり前のことをくどくど述べたように、人々はこの社会を認識するための多くの情報をマスメディアに依存している。テレビや新聞のニュースは頭上から一方的に降り注ぎ、人々はどこか胡散臭さを感じつつも、その圧倒的な影響力に抵抗するすべもなく、支配下に置かれてきた。

インターネットは、こうした一般市民に「情報発信権」という新しい市民権を与えた。
さらにブログは点在していた個々人を互いに結び付け、「ブロゴスフィア」と呼ばれる新たな言語空間を生み出した。

「万国のブロガーよ団結せよ!」
「POWER TO THE PEOPLE!」

今ブログは爆発的な感染力で広まりつつあり、蟻の大群が巨象を倒すように、マスメディア帝政に襲いかかり始めた。

ブログとはジャーナリズム革命である。
ニュースを伝える媒体が紙からオンラインにシフトするというのは、既存マスメディアを揺さぶる激震の一側面にすぎない。より本質的な問題は、ニュースの「編集プロセス」自体を根底から覆そうとしているインパクトであり、われわれが「世の中」を認識し、解釈する方法自体におけるパラダイムシフトである。

昨日ヨハネ・パウロ二世が亡くなった。ローマ法王とは「神の代理人」を意味するという。カトリックでは、人々は神と直接対話するのではなく、間に司祭という仲介人がいて、彼ら聖職者の口を通じて神の声、つまり世界観や価値観の一切を知ることになる。その聖職者ヒエラルキーのトップに君臨するのが法王だ。

中世ヨーロッパの農民は、生まれた瞬間から墓場に入るまでカトリック教会の支配下にあり、毎週日曜日に通う教会で一方的に講釈される世界観に疑問を抱くことなどありえなかった。

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