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March 26, 2006

グーグルの領土拡大図

google_domain 世界中いや宇宙中の情報を網羅し尽くそうとするグーグルの欲望はすごいものがある。そのミッションの壮大さと同時に、スピード感もすごくて、斬新で新しいサービスが矢継ぎ早に公開される。一度頭を整理するために、彼らが領域を拡大していく様子を、[ストック/フロー]と[パブリック/プライベート]という切り口で図式化してみた。もちろん一枚の断面図でグーグルの全体像を把握できるわけはないのだけど、宇宙全体を浸すエーテルのように、いまやグーグルはあらゆる空間に浸透しつつある。

▼「ストックとフロー」
図の横軸にとったストックとフローは「過去と現在」という時間軸とほぼ同義で、いわば情報の鮮度。グーグルはブログサーチやニュースアグリゲーションを洗練させ、最新の情報をより早く反映させると同時に、図書館の倉庫の奥でカビの生えたような古文書のデジタル化も進めている(ブックサーチ)。地理情報(アース・マップ)というのは、基本的にはストックな情報だけど、それをベースにカトリーナの被災状況を重ね合わせたりと、フロー情報とのマッシュアップも可能な基盤になっている。

ウェブ上の情報が爆発的に増えているとはいえ、実空間にある膨大な情報はいまだアナログのまま放置されている。グーグルが支配領土を広げるにはアナログ情報のデジタル化が重要課題。そこで、ユーザーが情報を簡単にデジタル化してウェブ空間に投げ込めるようなツールを無料で公開して、情報のデジタル化を促進する。(Base、Blogger、PageCreatorなど)

▼「プライベートな奥の院へ」
たとえ情報がデジタル化されていても、ローカルPC内に留まっていてネット上にアップされていない情報や、ネット上にあっても「認証の扉」の奥に隠されているプライベートな情報、SNSのような閉鎖的なネットワーク内には、どんなに高性能なグーグルボット(巡回ロボット)も侵入できない。

そこで、ローカルPC内に格納されている情報を丸ごと吸い上げたり(デスクトップサーチ)、文書作成も直接グーグルのサーバーに保存してもらう(writely)。メールやIMや電話といった極私的なフロー情報も全部面倒を見るし(Gmail、Gtalk)、SNSに外から侵入できないなら、内側につくってしまう(Orkut)。また各ウェブページの「管理人室」に入れてもらうために、管理人にとって魅力的なツールを提供して(Analystics、WebAccelerator、Sitemaps)、管理人室の中にまで招き入れてもらう。

ユーザーがモバイルからネットに接続すれば、机の前にいる場合とちがって、ユーザーが今どこにいるかも把握できる。位置情報というのは広告にとって極めて重要な情報となり得るので、グーグルはモバイルでの地歩固めにも躍起だ。カリフォルニアで実験的に行っている、wifiを安全に利用するための「Secure Access」というサービスでは、ユーザーはグーグルのVPNを通じて通信を行うことになっているらしい。ここまで来たら、ユーザー行動は完全に丸裸状態だ。グーグルボットは今や、パブリックな大通りや広場だけでなく、我々の家の中や脳内まで自由に出入りしている。

グーグルが巧みなのは、プライバシー情報を入手する際に、ユーザーに全く抵抗を感じさせないことだ。貴重な個人情報を入手するには企業側が金を払ってもおかしくないのに、「サービスは無料です」とやることで、ユーザーの方がから飛びついて個人情報を差し出す。それに例えばGmailだったら驚くほどの大容量を与えたりと、サービスの度合いもけた違いなものを用意して。例えは悪いけど、貞操帯を強引に突破しようとするのでなく、相手から股を開かせてしまうワザのうまさ(笑)

そしてそれは、「Don't be evil」(邪悪にならない)という極めて繊細な信頼関係の上に成り立っている。ユーザーからの高信頼こそが、グーグルにとって最大の無形資産といえるし、そこが最大のアキレス腱ともなり得る。

なぜグーグルがそこまで支配領域を広げていくかというと、ビジネス的にみれば、彼らのメイン収益源が広告であり、領域を広げれば広げるほど、広告を載せるキャンバスも広がっていく。そこは民放テレビのCM枠や野球場の看板とかと違って限界がない。プライバシー侵害の懸念の指摘されようが、メールの中身を分析して、その横に関連する広告を表示したり、地図の上に広告を埋め込んだりと、広告枠はどんどん広がっていく。さらにユーザーの極めてプライベートな情報を把握することで、広告の妥当性の精度をとことんまで高めることができる。グーグルは、ユーザーの友人や恋人、さらにはユーザー自身よりもユーザーのことを深層心理まで含めて知り尽くしている。いずれ「グーグル・カウンセリング(心理分析)」なんてサービスさえ始まるかもしれない。

それに、グーグルというベスト&ブライテストなギーク集団は、なにか金儲けとは別の衝動によっても突き動かされているような気がする。ここまで巨大化してくると、「Don't be evil」という証紙一枚で信じ切っていいものかどうか、やや不安な気もしてくる。

googlebot

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March 13, 2006

WEB2.0の教科書

最近は Amazon中毒がさらに悪化して、毎日のように家に本が届く。本の置き場にも困るので、読み終えた本をマーケットプレイスに出品することも始めたんだけど、これがまた予想以上にサクサク売れて、けっこううれしい。それも50円とか二束三文で買い叩かれるブックオフに比べるとかなり高い値段で。でも500円位のために梱包したり発送したりするのは結構面倒なんだけど・・・

で、最近読んだ「WEB2.0 BOOK」は、梅田さんの「ウェブ進化論」に負けず劣らずの良書だった。

Web2.0 BOOK
Web2.0 BOOK 小川浩(サイボウズ株式会社) 後藤 康成(株式会社ネットエイジ)


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「ウェブ進化論」が、「こちら側」にいる人の目を「あちら側」に向けさせる優れた啓蒙書だとすれば、この本は「あちら側」のことをもっと知りたいと思い立った人向けの格好の教科書といえそう。ウェブ進化論を読んでケツに火がついた人は、次にこれを読んで基礎知識を勉強してみたらどうでしょう。

「ロングテール」や「フォークソノミー」、「マッシュアップ」といったトレンドの重要キーワードから、「Ajax」とか[LAMP」、[Ruby on Rails」などの技術用語の解説まで、素人でもよく理解できるように説明されてて、基本を押さえた後の後半はGoogleやAmazonなどの成功しているWEB2.0企業を例に取り、最先端の業界動向が俯瞰できるようになっている。インデックスも充実しているので、事典として横に置いておく分にも便利そう。

ジャンルはちがうけど、「直観でわかる数学」という本も、目からウロコが連発の最高にいい本。「こういう本に学生時代に出会っていればなー」と後悔させられる本の1冊で、高校生とかは今のうちに絶対読んでおいた方がいい。数学で大事なのは、オペレーション(計算)ではなくて、世の中の事象を抽象化する視点のもち方なんだということがよく分かる。

作者の畑村さんは別の著書で、「『分かる』とは、自分の中に既にあるテンプレートと比較して一致すること」というようなことを書いていた。新しい知識というのは全く新しく脳に書き込まれるのではなくて、古い知識を組み合わせて理解しているのだと。

そう考えると、説明がうまい人というのは、
①テンプレートとテンプレートを結び付ける「比喩」が巧み
ということと、
②相手がどんなテンプレートをもっているのかを読み取る
という2つの要素を備えているということだ。

梅田さんはグーグルを理解させるのは大変だという苦労話をよく書いているが、新しすぎるものは既存のテンプレートに当てはまるものがないから、適切な比喩を探すのも大変だということだろう。それでも「ウェブ進化論」という本は、その点で見事に成功したから至極分かりやすく、ベストセラーにもなっているのだろう。自分も赤線だらけにしながら読み終えた。だけど、うちの親父がこの本を読んだとして、果たしてグーグルのすごさを理解できるだろうか・・・

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