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April 10, 2006

平らになりつつある世界で

ワールドビジネスサテライトの梅田さんの話を聞いて、「世界が平らになりつつある」という話を思い出した。以前にアマゾンのMechanical Turkのことを書いたときにも触れたトマス・フリードマンのインタビュー記事がかなり強烈に印象に残っていて、あらためてその記事を以下に翻訳してみた。

このジャーナリストの名前に聞き覚えがなくても、「マクドナルドのある国同士は戦争をしない」という定理を発見した「レクサスとオリーブの木」の著者と言えば思い出す人もいるかも知れない。

彼の説が斬新なのは、WEBの進化から経済のグローバル化、アルカイダから政治的な世界情勢までを「ネットワーク化」という視点で体系的に捉えようとしている点で、すごく魅力的で面白い論考だと思う。原書の「The World Is Flat」はアメリカでかなり話題を呼んで、ベストセラーにもなったらしい。

勝ち組とか負け組とか「格差社会」の話題がブログでも最近さかんだけど、国内の視点だけで考えようとすると、問題を矮小化してしまうだろう。フリードマンがアメリカ社会に鳴らしている警鐘は、そのまま日本にも当てはまる。「アメリカ型経済が是か非か」なんて議論も的はずれ。望もうと望むまいと、フランスの若者が暴れようと、知らぬ間に世界は平らになってしまった。かつては食にさえ飢えていたインド人や中国人がおなじ土俵上で"starving for our jobs"われわれ先進国のパイを奪おうと口を開けているのだから。

ヒルズ族も、時給800円のフリーターも、世界的に見れば「勝ち組」なわけで、小泉ソーリに「負け組を救え!」なんて叫んでみたところで、振り返れば中国人らが必死で我々を一等室から引きずり降ろそうとしているのだ。


----------以下翻訳---------

インタビュアー:世界が平らになったとはどういう意味か

フリードマン:インドでInfosys社のナンダン・ニレカニ氏にインタビューしていた時、彼にこう言われた。「トム、競争の場はどんどん平らになりつつあるんだよ」。インド人や中国人はかつてないほど仕事の上で競争力をつけつつあるのに、アメリカ人は備えができていない。私はそのフレーズをなんども噛みしめた。「競争の場はどんどん平らになりつつある」。えらいこった、世界は平らになりつつある!技術面や政治面での条件がそろい、グローバルな競争の場がウェブの力を借りて登場した。地理や距離、言語すら飛び越えて、あらゆるコラボレーションが可能になった。

Q:オープンソースのようなものの登場によりグローバリゼーションが拡張されてきたと?

A:これはグローバリゼーション3.0です。グローバリゼーション1.0は(コロンブスが新大陸を発見した)1492年に始まり、世界の大きさはラージからミディアムに変わった。グローバリゼーション2.0の時代になると、多国籍企業が活躍しだし、世界のサイズはミディアムからスモールになった。そして2000年ごろから始まったグローバリゼーション3.0では、世界はスモールからタイニー(さらに小さく)になった。インターネットにより遠距離電話がぐっと安くなったが、リヤドを歩きながらPDAを使い、グーグルをいつでも使えるようになった変化はさらに大きい。

Q:それは、ネットスケープのIPOが世界を平らにした10の要因の一つであることと関連がある?

A:理由は3つあって、ネットスケープのブラウザーはインターネットに活力を与えた。ブラウザーの登場で子供からお年寄りまでネットを使うようになった。2番目にネットスケープは、オープンなトランスミッションプロトコルを商用化することで、どこかの会社がネットを支配することを不可能にした。三番目に同社はドットコムブームとドットコムバブルを生み出し、光ファイバーへの過大投資ももたらした。

Q:通信手段がテロリズムにも力を与えたと?9・11との関係は?

A:世界が平らになりつつあることこそ重要で、そのこと抜きに9・11は理解できない。

Q:この本はおそらく、外交問題の評論家が初めてサプライチェーンの重要性に触れた本だと思うが

A:笑

Q:なぜサプライチェーンはそれほど重要?

A:世界を平らにする重要な要因だからです。UPSを例にとると、彼らは通関事務所を世界中につくりあげ、あなたが配達物をUPSの店にもっていくと、UPSのハブに集約され、各地に配送されるサプライチェーンのアルゴリズムを作り上げた。そのシステムではあらゆるムダが取り除かれている。核の危機が迫った2002年にインドでWiproのヴィヴェック・ポールにインタビューに行ったのだが、その直前に彼がアメリカの重要な顧客から受け取ったメールには「我々はあなたに代わる取引先を探しているが、本当は探したくないし、あなた方もそうされたくないだろう。だからなんとかしてくれ!」と書かれていたという。それを聞いて私はインドのグローバルサプライチェーンにおける役割がインドのビジネス界に与えている影響を感じ取った。それはニューデリーにも波及していた。

Q:あなたは以前にマクドナルドのある国同士に紛争は起こらないという説を唱えたが、今ではデルにも同じ理論があてはまると?

A:そう。デルのような会社のサプライチェーンに組み込まれている国同士は決して争わない。ほかの国のだれかが倉庫や人材資源や会計を管理している間は。それはお互いに同じベッドの中にいるようなもので、お互いの行動に影響を与える。

Q:世界が巨大なサプライチェーンになったと。そうなれば誰もそれを壊したくないと。

A:その通り。

Q:しかし、サプライチェーンはアルカイダの役にも立っている?

A:アルカイダとは、サプライチェーンの突然変異にほかならない。彼らはウォルマートやデルとは異なるプラットフォームで機能している。アルカイダとは何かと言えば、グローバルなサプライチェーンからは切り離された、宗教的で政治的かつオープンソースなムーブメントだ。アメリカがイラクで困難に直面しているのもまさにそのためだ。われわれは自爆のサプライチェーンに悩まされている。1人の爆弾テロがバクダッドに向かえば、別の人間が翌日にはリヤドで製造される。まるでウォルマートで一つのおもちゃが売れると翌日には上海でもう一個つくられるように。

Q:この本はイラクや中国にはかなり楽観的だが、こうした地域ではなにが起きている?

A:次のバイオサイエンスにおけるブレークスルーは、エジプトの人ゲノムをダウンロードする15歳の少年が起こすんじゃないかと思っている。ビルゲイツはいいことを言っていて、「20年前にニューヨーク郊外におけるBクラスの生徒になるのと、上海の天才になるのとではどっちがいいかと言えば、たいていの人は前者を選ぶだろう?では20年後は?」

Q:それは当然
A:上海の天才だろう。なぜならその才能を今では世界のどこにでも輸出できるのだから。

Q:上海の子供の未来は明るくても、アメリカの子供はそうでない?

A:私はこの国のことを愛しているが、本当に心配だ。アメリカは最高の国だと思うが、あまりにsauce(?)に気をかけていなさすぎる。われわれは「静かな危機」にあるのだと思う。フラットな世界に対して本気で取り組まないと、このままでは子供達は激しい競争に直面し、将来は大変な社会になるだろう。

Q:アメリカ人は高給取りであることに慣れすぎて、それを当たり前に思っているが故に今後はそのことで苦しむだろうと?

A:誰かも言っていたが、現状の待遇が当たり前だという感覚は捨てなければならない。

(略)

Q:どのような方策をとるべき?

A:今のように、このような事態に対処し、最悪の状況を避けるための方策をだれも語ろうとしないのは恐ろしいことだ。我々がかつて共産主義と対峙した時と同じくらい、真剣に集中的に取り組む必要がある。これが今日の重大な課題なのだから。

Q:アメリカの子供達にアドバイスをするとすれば?

A:私が子供の時、親から「ご飯を全部食べなさい。インド人や中国人は飢えているんだよ」と言われたが、私は今、娘にこう言っている。「宿題をやりなさい。でないとインド人や中国人に仕事を奪われてしまうよ」

Q:もし少年時代のあなたが2005年にトランスポートしてきたとしたら何に一番驚くと思う?

A:PGA.comでお気に入りのゴルファーのスコアがリアルタイムで見られることかな。

【世界を平らにする10の要因】
1、ベルリンの壁の崩壊
  1989年 世界のバランスを民主主義と資本主義に傾けた
2、ネットスケープのIPO
  1995年 光ケーブルに巨額の投資が行われた
3、ワークフローソフトウェア
  PayPalやVPNなどのアプリケーションが広範囲な労働者との連携を可能にした。
4、オープンソース
  リナックスのような自己組織的コミュニティーを生み出し、協業革命をもたらした。
5、アウトソーシング
  ビジネスをインドに外注することで、コスト削減と同時に途上国経済を救った。
6、オフショアリング
  委託製造が中国の経済的地位を高めた
7、サプライチェーン
  サプライヤや小売業者、顧客のネットワークを強め、ビジネスの効率を高めた。ウォルマートのように。
8、インソーシング
  UPSやFedExのような巨大な物流業者が顧客のサプライチェーンを支配し、ママパパストアさえグローバルな展開が可能に。
9、情報力
  グーグルのようなサーチエンジンが個人の知のサプライチェーンを可能にした
10、ワイヤレス
  ステロイドのように協業を強化し、モバイル化、パーソナル化した。  

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【参考】

"The World Is Flat"が示す、世界フラット化の要因

分裂勘違い君劇場 - 西暦2026年の日本

My Life Between Silicon Valley and Japan - Thomas Friedmanインタビュー

この先10年で、働くことの意味がきっと大きく変化する

    
    

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April 01, 2006

またまたグーグル領土拡大?

前回の記事で、グーグルの事業ドメインを調べているときに、不思議に思っていたことがあって、テキストから始まってイメージやビデオとメディアの領域を広げていってるのに、なんでこの分野は欠落してるんだろうと思っていたんだけど、やっぱり何か画策しているようだ。

グーグル、音楽業界大物らとの会談へ

「Google Music」登場ですか!?
と思ったら「現時点では、われわれは音楽配信サービスを開始する予定はない」ということなので、itunesと競合するつもりはないのか?渡辺聡さんは、グーグルの最近の傾向から見て、

情報のマッチング(サーチ)のみから具体的に配信プラットフォームとして機能する場面が増えていることから(Base、Video)、音楽ファイルくらいなら配信まで踏み込んでくると考えたくなります。なんせ決済は既に持ってますし。

とみているようだけど。まあ普通に考えれば音楽だけミッシングリンクになる方が不自然な気がする。

それとこんな記事も

グーグルが遺伝子情報検索データベースを計画か

ついにグーグルネ申は、生命の神秘の解明にまで手を伸ばしてきましたか。その目的の一つとして

「個人の遺伝子に応じてカスタマイズされた医薬品が手に入る素晴らしい新世界の実現に力を貸すことだという」

という推測があるということは、個人個人の遺伝子情報まで収集しようということなのか?しかしどういう手段で?

例えば、わが日本国政府はこんな方法で、外国人プラス自国民の生体情報を集めようとしている。(「出入国審査をスムーズにするため」とか変な屁理屈をつけてるが、最初から治安維持に利用しようとしているのはミエミエ)

出入国の自動化ゲート…捜査に利用 入管が提供 (毎日)

 出入国審査をスムーズにするため政府が導入を予定している「自動化ゲート」を巡り、ゲート利用者となる日本人や特別永住者らの指紋情報が、犯罪捜査にも 利用されることが分かった。政府は「自動化ゲートで日本人や問題のない外国人の利便性が高まる」としているが、個人情報保護の観点から指紋情報の扱いが議 論になりそうだ。
 法務省によると、ゲートの利用希望者が提供した指紋情報は入国管理局のデータベースに保存され、「本人がゲートを利用する意思を有する間」は保有し続け る。警察などが犯罪捜査の証拠収集の一環として、捜査関係事項照会書に基づいて指紋の照合を求めてきた場合には、指紋情報を提供するという。

ところで、この読売の記事を見ると、もともとグーグル創業者のラリー・ペイジの夢は「検索技術を遺伝子の解明にいかすこと」だったっていうから、最初から想定の範囲内の話なのか。

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