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October 24, 2006

僕らはグーグルの巨大な磁力に知らぬ間に動かされている

グーグルの戦略を見ていると、いつも【compelling】という単語を思い出す。動詞の【compel】とは「人に何かを強制する」という意味だけど、転じて形容詞【compelling】は「すばらしい」というポジティブな意味をもつ。つまり、「人の心を引きつけて放さない」「すごすぎて無視できない」という感じ。compelling movie といえば、すごく魅力的な映画という意味になる。

例えば、日本国家が住基ネットや盗聴法を導入しようとすると猛反発したり、中国の人権侵害を非難する人たちが、なぜGmailやグーグルofficeを喜んで使い、自ら進んでプライバシー情報をグーグルサーバーに放り込むのか?

これは考えてみるとすごく面白い現象だ。要は「北風と太陽」というか、レイプ魔と口説き上手のモテ男とのちがいというか。つまり同じ目的を遂げるにも、やり方次第ということ。

グーグルは、使わずにはいられないほど魅力的で便利な(つまりcompellingな)サービスを次々と繰り出すことで(しかも無料で!)、パクッと食い付いてきたユーザーに、いかに自発的にデータを提供してもらうかに腐心している企業だと言える。[関連]グーグルの領土拡大図

なんのために?グーグルという組織を一言で言ってしまえば「情報フェチ」なんだと思う。上場してるくせに金儲けのことよりも、世界中の情報をかき集めてきて、オーガナイズすることに無上の喜びを感じる連中。ラリーとセルゲイはもともと上場に反対だったっていうし。

グーグル学の泰斗essaさんも同じようなことを言っている。

ビジネスモデルとして劣悪であっても、より多くの「アトムのビット化」を継続的に行なえるようなプランがあったら、グーグルという会社の中では良いプランとして評価されるのではないだろうか。

だから、 "scanning every ATOM on the earth" は、結果として、利益の極大化を目的にした普通の企業のやることによく似ている。でも、それはたまたま二つの原理が行動として同じ結果を産むというだけの ことだ。外部から観察できる行動にはそれほど違いは見えなくても、組織を駆動する原理は全然違うものかもしれない。( scanning every ATOM on the earth)

そういう意味で、YOUTUBEを買った目的も、なによりYOUTUBEが保有している膨大な動画データが欲しかったという仮説は成り立たないか?優秀なボットをクロールさせなくても、放っておけば世界中のユーザーが世界中の動画を毎日勝手にどんどん投げ込んでくれる巨大なバケツを。世界中のリビングルームに散逸している動画アーカイブを労せずして集めると同時に、CGMも自由に投げ込んでもらう。テレビ局から抗議を受けて、いまはYOUTUBE上で公開していない動画だって、サーバーの中には残っているだろうし。

企業してのグーグルが、テキストサイトにおけるadsenseという大発明により成功したように、動画広告でも画期的な広告手法を開発して大もうけするかも知れない。だけど組織を動かしている本当の欲望は金もうけじゃなくて「情報フェチ」なんじゃないかと。

話は戻って、次の記事もグーグルのもつcompellingな力をうまく表現している。

「表面に見えているのは、あくまでもグーグルが選んだ“外向きの顔”に過ぎない。同社は、テーブルの下に磁石を隠し持っており、テーブルの上にある金属の球を操っているのだ。そして、磁石の存在が見えなければ、人々は球が勝手に転がっていると思い込んでしまうものなのだ」(レンセン氏)

 同氏の言葉を借りれば、グーグルが世界に向けて提示しているアプリケーションやサービスは金属の球、秘密にしているアーキテクチャが磁石ということになる。その磁石の部分こそが、グーグルの最大の強みであり、なおかつその詳細が外部から見えないからこそ、グーグルのビジネス戦略はきわめて分かりにくいのである。 (Web界の巨人「グーグル」の果てしなき野望

compellingという言葉がもともと両義的で、ポジティブでもありネガティブな意味ももつように、グーグルの巨大な磁石に自分たちがいつの間にか動かされていることについては、当然ユーザーの間で賛否両論が巻き起こる。梅田さんのエントリーに対する、コメントやはてブコメントを見ると、「奢れるもの久しからず。私ならYoutube買収がGoogle凋落のきっかけになるほうに賭けます」とか「みんなgoogleが大好き」とか、グーグルに対するイメージが見事に分裂していて面白い。

良い権力か悪い権力かはともかく、もはや強大な権力者になってしまったnon-stop trainのことは、もはや誰も無視できなくなった。ブログを眺めても一億総グーグル評論家みたいな状況になっている。再びessaさんいわく

20世紀の人文学が「核戦争」というテーマに取り憑かれていたように、21世紀に人文学というものの意味があるとしたら、「グーグル八分」を自分の言葉で語ることから逃げられない。

グーグル八分に限らずとも、21世紀の政治、経済、法律、テクノロジー、あらゆる分野において、インターネット政府たるグーグルを抜きに語ることはできなくなってしまった。

福島県知事じゃないけど、絶対的権力は絶対に腐敗する。今は「dont be evil」と無邪気に言っているネット政府のHAL化をいかに防ぐか?
長くなったので、また次回書きます。

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October 13, 2006

「腐海」化した北朝鮮の最終処理に入った

北朝鮮の崩壊カウントダウンは確実に進んでいるようだ。

ことここにいたって「核放棄させて国際社会に復帰させる」とか「六カ国協議の再開を」とかいう評論はトンチンカンもはなはだしい。キ●ガイが刃物を持った北朝鮮にビビって、「戦争が始まる」とか、「日本も核保有せよ」とか危機感をあおっているのは一部右翼であって、虚像におびえずに冷静に北朝鮮の現状をみる必要がある。

前回も書いたように、北朝鮮という国家は「お前はすでに死んでいる」状態にある。ではなぜ生き延びているかと言えば、日本やアメリカが兵糧攻めにする一方で、中国と韓国が鼻チューブでミルク補給(経済支援)をしてきたからだ。

だから特に中国が原油や食料の供給を止めたその瞬間に、北朝鮮は崩壊する。北朝鮮の命脈は完全に中国が握っている。北朝鮮は周辺諸国の都合によって無理やり延命させられている瀕死の患者にすぎない。

怖い顔のライスさんが東アジア諸国を回りにきたのは、今さら北朝鮮に核を放棄させるための相談にきたのではなく、いかに北朝鮮を安楽死させ、その後の処理をどうするかということこそが主題のはずだ。もちろん表向きはそんなことはおくびにも出さないだろうが。

ではなぜ今まで北朝鮮は延命させられてきたのか?

ハードランディング(戦争)を避けたいというのももちろんあるけど、より面倒なのはその先だ。テレビゲームであれば、悪役の金正日を倒せば、ゲームクリアでめでたしとなるだろうが、現実の世界はもっと複雑だ。金正日がいなくなった世界が今よりもすばらしくなるとは限らない。

北朝鮮がもっている最大の抑止力は、よく言われるような核兵器ではなく、北朝鮮という国家自体がナウシカの「腐海」みたい存在だからだ。金正日体制が続くのは迷惑だが、腐海のトビラが開いて、紫色の胞子が周りに拡散して、自分も被害を受ける方がもっと恐ろしい。

中国には大量の難民が押し寄せるだろうし、なにより、緩衝地帯だった北朝鮮がいなくなれば、地球上に残った数少ない社会主義国である中国の共産党政府は、アメリカと直接対峙することになる。韓国にとっては、東ドイツ以上に荒廃した半島の半分と、そこの洗脳信者達を立ち直らせるための経済的、社会的なコストは莫大なものになる。日本にとっても、中国とアメリカという超大国に挟まれ、反日で団結した統一朝鮮半島が現れる世界は、今よりも望ましいだろうか。

また北朝鮮の後処理でだれが主導権を握ることになるのか?中国?アメリカ?第二次大戦で日本とドイツを打ち負かした瞬間に、鉄のカーテンが降りて冷戦が始まったように、また新しい紛争の火種は生まれる恐れはないのか。

つまり、金正日亡き後の東アジアが、今より安定するとは限らない。 だから北朝鮮国内で無辜な人民が数百万人も餓死していようとも、北朝鮮国内の害悪は北朝鮮国内だけに封じ込められている現状の維持が一番いいと周辺諸国は本音ベースでは思ってきた。

だけどそれは「事態の先送り」にすぎない。日本の不良債権問題と一緒で、塩漬けにしておいても状況は好転するどころか、むしろ傷みがはげしくなるだけだ。

今後の流れを見極めるためのポイントは、中国の出方につきる。中国がもし本気で国連の制裁決議を守れば、北朝鮮は崩壊してしまう。胡錦濤がそのボタンを押す勇気があるかどうか。勇気と言うよりも計算と言った方が正しいか。国際社会はその一点をみつめている。

さらにさらにナウシカをなぞって、もっと話を飛躍させれば、社会主義国が消滅して、65億人がむき出しの欲望を追求する今の世界がいつまで存続可能なのだろうか?やっぱり地球のためにも、「火の七日間戦争」が起きて、腐海に一度覆われた方がいいのかも!?

(highly inspired by  「溜池通信」 必読! 全文引用したいほど鋭い示唆に富んでます)

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October 11, 2006

問題は核じゃない。経済だ、愚か者!

表題はもちろん、クリントンが選挙スローガンに使った「It's the economy,stupid」より

北朝鮮の核実験について押さえておくべき一番のポイントは、本当に核だったのかどうかとか、国連憲章7章がどうとか六カ国協議とかテクニカルな話よりも、兵糧攻めによって北朝鮮が経済的に陥落寸前であることがあぶり出されたことだ。

北朝鮮がどうやって食べている国かと言えば、主な輸出品がミサイル、シャブ、ウルトラダラー(偽ドル)、偽タバコ、偽バイアグラ、それに在日支援者からのパチンコの不正送金という、とても近代国家とは思えないアウトローぶりである。

表向きには、

2003年の北朝鮮の貿易額は、輸入が19億400万ドル、輸出が12億1200万ドル。主な輸出品は海産物を中心にした動物製品で全体の37%を占める。このほか、繊維製品(同17.1%)、機械・電機製品(同12.9%)と続く。

具体的に日本への輸出品としては

あさり(40億円)、衣類(28億円)、松茸(8億円)である。

とのことだが、驚くなかれ、こうした公の統計には出ない裏稼業による収入は、麻薬や偽タバコなどを合わせて年10億ドル(1200億円)もあり(「北朝鮮クライシス」より)、パチンコの不正送金にいたっては年間2000億円!にものぼるという。

イランやイラクで忙しいアメリカは、北朝鮮に武力行使する余裕も意思もなく、代わりに採っている戦法が「兵糧攻め」であり、上記の資金還流を徹底的に遮断しており、これがテキメンに効いているのだ。かつて日本が太平洋戦争に暴発する直接の引き金となった、「ABCD包囲網」と同じ様に・・・

例えば、アメリカは北朝鮮のマネーロンダリングの温床であったマカオの銀行口座を凍結したが、その口座には「北朝鮮の国家予算の約2割」(北朝鮮クライシスより)が眠っていたという。

わが日本政府も、かつてのタブーがうそのように、北朝鮮関係のヒト、モノ、カネを徹底的に遮断している。例えば、北朝鮮からシャブを密輸している在日系暴力団を島根県沖で摘発したり、福島県知事ルートで騒がれているが、北朝鮮へのミツグ君でもあった水谷建設を摘発したり、脱税したパチンコマネーを現ナマで運んでいた万景峰号の入港禁止したりと。

日本政府が昨日発表した、北朝鮮からの輸入の全面禁止や、北朝鮮籍船舶の入港禁止、北朝鮮籍を持つ人の入国禁止は、こうした流れの極めつけであり、ヒトモノカネの日本からの直接の流れは完全に遮断されることになる。

また北朝鮮にとって、こうした違法ビジネスと並んで重要な収入源が、カツアゲだ。つまり核保有やミサイル発射で国際社会をどう喝して、人道支援などの見返りを引き出す。これがまた過去に何度も成功体験があるので、いつまでも繰り返してしまう。

北朝鮮の経済は、カタギになろうにもなれないヤクザと一緒で、違法ビジネスによる収入が断たれたからといって、更生して外貨を稼ごうにもまともな産業がない。このまま座して死を待つよりは、抜いちゃったらお終いの「最後のカード」である核実験に踏み切って、もう一度カツアゲしてやるか、というのが、今回の騒動の実態じゃないか。だからこそ、「これ以上の経済制裁は、宣戦布告とみなす」とか過剰反応してくる。

「アメリカの攻撃からの抑止力」、というのは一面正しくとも、真の理由ではないだろう。抑止力というのは、いわば「ハリネズミ戦法」だが、北朝鮮が今一番困っているのは、外部からの脅威じゃなくて、経済の崩壊という内部要因だ。これ以上防御を厚くしたところで、「引きこもり生活」を維持できないのだから、カツアゲに走るしかないのだ。

他方、アメリカが軍事制裁に踏み切らないのも、イランイラクに手いっぱいということよりも、北朝鮮なんてこのまま放っておけば自壊するから必要がないと考えているからだろう。(核がテロリストに渡ったり、自国まで届く核弾頭ミサイルが開発されない限りは)

個人的な印象としては、北朝鮮も誕生から60年もよく長続きしてきたものだが、今度こそ完全に崩壊のカウントダウンに入ったと思う。核を持とうと持つまいが、既に崩壊した共産主義国家と同様、経済がダメになれば根腐れするように、体制は崩れ落ちるだろう。

ポイントは、これまで北朝鮮に援助してきたが、今回の件でさすがに愛想を尽かしつつある中国や韓国が、本当に援助を打ち切るか。打ち切れば崩壊の直接の引き金となるだけに、両国にそれをやる覚悟があるかどうか。

そして、ABCD包囲網が日本の暴発を招いた二の舞いとならないよう、いかにソフトランディングさせるか。そして半島統一後に現れる新しい世界に、日本がいかに適応していくかを今から本気で考えとかないと。

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October 09, 2006

秋の夜長に徳永英明の歌声がよすぎる件

「モヤモヤ病」から立ち直ったオジサンの歌声、美しすぎです

しかし今宵の月が澄み切っていてエライきれいなんで、中秋の名月かと思ったら二日ほど過ぎていた・・・まあいいか。とにかくこんな秋の夜にぴったり

女性アーティストの曲ばかりを集めたカバーアルバムなんだけど、「古い井戸」の底に眠った、いまとなっては死に筋の名曲と、徳永英明の歌声がマッシュアップされて、照明を落とした部屋で酒を飲みながら聴くと感涙ものです

 

【今日の発見】

~鮮度を追うな、immortalな価値を見出せ~

流行フローを直線的に追い求めるよりも、優良資産は足下に層になって積まれている
たまには土を掘り返して循環の矢を回そう

~人の心に共鳴を起こすには 声を張り上げるよりも 力を抜くことだ~

徳永は、ここから盛り上がる!ってとこで、かえって力を抜く
そうすると声は、より深く遠くまで届く
叫んだり、「湘南の風」のようにがなり立てるのは逆効果
ボールを遠くへ飛ばそうと思うなら、力を抜くことと一緒
このリクツはおそらくあらゆることに通じる

 

 

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