December 01, 2006

WEB2.0時代に沈黙は「悪」である

磯崎さん発の議論に便乗。

読んで感じたのは、web2.0の時代において、はっきりしているルールは、「沈黙は悪」である、と。

我々はみんな「参加せよ!」「発言せよ!」「データはすべてWEBサーバーに放り込め」という暗黙の圧力にさらされている。ブログしかりSNSしかりwikipediaしかり。

ちょっと前に芥川賞作家の平野啓一郎さんが自身のブログで書いた文章が、この問題について全てを語り尽くしている。

ご存じない方もいるかもしれないけど、平野さんの著書にパクリ疑惑がもちあがり、平野さんからすればまったくの濡れ衣なのに、wikipediaにも盗作疑惑と書かれてしまった。それに対する平野さんの反論は、WEB2.0に対する見事な考察にもなっている。

ネット以前の世界では、「人の噂も七十五日」である。不当な噂(=情報)を流されても、無視しておけば、時間がそれを淘汰してくれる。・・(略)・・web2.0的な世界はそうではない。そこで情報は、最早誰のものでもない匿名の言葉となり、匿名の知となって、世界中を駆け巡る。誤った情報を放置しておくと、単にそれが何時までも残り続けるというだけではなく、様々な人の手を経て増幅し、増殖する。

 だからこそ、私は今、この6年前の出来事に関して、私自身の言葉を「参照可能な情報」として、新たにネット空間に付け加える必要を感じた。・・(略)・・時が解決してくれる、無視して関わりを持たないといった態度は、今日にまで至る長い人間の歴史の中では、不当な出来事に「巻き込まれた人間」が取り得る態度として、必ずしも消極的だというわけではなく、恐らくは、賢明であり、かつ有効なものと信じられていた。・・(略)・・しかし、それが「変わった」のである。しかも、まさしく今、「変わった」のである。

 web2.0以降、「巻き込まれた人間」は、ただ黙っていても、状況を改善されず、それどころか、悪化させてゆくこととなった。・・(略)・・その状況を不当と感じるならば、自らが積極的に、新しい情報となる言葉を発しなければならない。・・(略)・・梅田氏は、web2.0的世界では、最終的には51対49であっても、「正しいこと」が勝利するのではないかという見解を私に語った。・・(略)・・しかし、情報となる言葉を発しなければ、「正しいこと」であっても、100対0で敗北し得るのである。
平野啓一郎公式ブログ - web2.0的世界において、「名誉」を守るということについて

弾さんが言っていることも同じこと。

もし自分が気に入ったお店のWeb上での評判が異なるのであれば、自分はそう思わなかったという意思表明をしておくのが今の「ネティケット」かも知れません。

現実の政治でも、投票に行かない人は搾取されるように、グーグルのページランクという民主主義の下では、発言しない者はこの世に存在しないに等しい。

自分の名誉や利益を守るためには、誰よりもでかい声で叫び、ウェブという共同落書き帳の上に、絵の具で色を「上塗り」し続けないといけない。それが今の時代の新しいルールなんでしょう。

「ウェブ人間論」はまだ読んでないけど、こうした問題も触れられているのかな?

【補足】
ちょうどこんな記事も。
J-CAST ニュース : ウィキペディア編集方針 西和彦がモーレツ批判

インターネット上の百科事典「Wikipedia(ウィ キペディア)」にある「西和彦」の項目をめぐり、大騒ぎになっている。きっかけは、元アスキー社長である西和彦さん本人が記事の大部分を削除したことだっ た。さらに、同氏は「誰でも編集できる」編集方針を厳しく批判し、「嘘で嘘を塗り固めているようなもの」という挑戦的な言葉も投げつけており、今後も波乱 含みだ。

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November 15, 2006

破壊神グーグルによる真の「予想外¥0」

グーグルは今度は携帯も無料にするつもりらしい (メディアパブさん経由

CNNの記事(ロイター配信)のポイントを要約すると、

・ターゲットを絞ったモバイル広告によって将来、携帯電話の料金は無料になる。
・実際には、新聞が広告収入を得ながらも無料でないように、完全には無料にはならないかもしれないが、かなり安くできる。
・テキストや、ブランドイメージ、ビデオの広告を携帯のスクリーンに送る実験を始めている。
・先進的な取り組みとして、ワンセグやモバイルコマースが進んでいる日本で提携に成功した(auのこと)
・グーグルは、やがてモバイル広告の収入が現在のPC上のテキスト広告に匹敵する規模になる、とみている。

待機中の携帯のスクリーン上に絶えず広告が送られてくる仕組みのようだ。 既にPCを通じてがっちり集めた各ユーザーの趣味趣向の情報に、モバイルのGPSを通じた位置情報を組み合わせれば、相当に効果的な広告が打てるということでしょう。孫さんのインチキ広告とは違って、本当に価格破壊が実現しそう。

時期については、「今すぐにではない」という以上に記事の中では明言してないけど、実現したらLBOで1兆7千億も投じて綱渡りのソフトバンクは、マジでやばいことになるのでは?グーグルと早々に提携したauは広告収入で生き残れることになるのだろうか?

この記事の中では、携帯以上に重要なことに触れている。

グーグルが膨大な個人情報を保有するにつれて、「自分のデータは誰のものか?」という議論が起きているが、それについてCEOのエリック・シュミットが明確な方向性を示している。

・データは人質ではない。個人データのコントロール権をユーザー自身に認める。
・携帯電話でいうナンバーポータビリティーのように、検索履歴などの個人データをエクスポートして移動できるようにする。法律に強制される前に、自発的にそうする。
・囲い込みからオープンに向かうインターネットの流れに応えるもの。

目下敵なしのグーグルにとって、一番恐れていることは、「ユーザーのグーグルに対する警戒心が高まること」だろう。喜んでデータを提供してもらい続けるためにも、「邪悪にならない」というメッセージを発信し続けることが重要だし、ユーザーフレンドリーであることをアピールし続けることが生命線。その意味で、「個人データはあなた自身のものですよ」という安心感を与えるメッセージは重要なのだろう。

【追記】

と書いていたら、タイミングよくこんな記事が

Yahoo!とVodafone、英国でのモバイル広告で提携

本家ボーダフォンもヤフーと手を組みましたか
日本でもソフトバンクは、ヤフーと一緒に収益源を広告にシフトしていけるかがポイントになってくるのかも。

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October 24, 2006

僕らはグーグルの巨大な磁力に知らぬ間に動かされている

グーグルの戦略を見ていると、いつも【compelling】という単語を思い出す。動詞の【compel】とは「人に何かを強制する」という意味だけど、転じて形容詞【compelling】は「すばらしい」というポジティブな意味をもつ。つまり、「人の心を引きつけて放さない」「すごすぎて無視できない」という感じ。compelling movie といえば、すごく魅力的な映画という意味になる。

例えば、日本国家が住基ネットや盗聴法を導入しようとすると猛反発したり、中国の人権侵害を非難する人たちが、なぜGmailやグーグルofficeを喜んで使い、自ら進んでプライバシー情報をグーグルサーバーに放り込むのか?

これは考えてみるとすごく面白い現象だ。要は「北風と太陽」というか、レイプ魔と口説き上手のモテ男とのちがいというか。つまり同じ目的を遂げるにも、やり方次第ということ。

グーグルは、使わずにはいられないほど魅力的で便利な(つまりcompellingな)サービスを次々と繰り出すことで(しかも無料で!)、パクッと食い付いてきたユーザーに、いかに自発的にデータを提供してもらうかに腐心している企業だと言える。[関連]グーグルの領土拡大図

なんのために?グーグルという組織を一言で言ってしまえば「情報フェチ」なんだと思う。上場してるくせに金儲けのことよりも、世界中の情報をかき集めてきて、オーガナイズすることに無上の喜びを感じる連中。ラリーとセルゲイはもともと上場に反対だったっていうし。

グーグル学の泰斗essaさんも同じようなことを言っている。

ビジネスモデルとして劣悪であっても、より多くの「アトムのビット化」を継続的に行なえるようなプランがあったら、グーグルという会社の中では良いプランとして評価されるのではないだろうか。

だから、 "scanning every ATOM on the earth" は、結果として、利益の極大化を目的にした普通の企業のやることによく似ている。でも、それはたまたま二つの原理が行動として同じ結果を産むというだけの ことだ。外部から観察できる行動にはそれほど違いは見えなくても、組織を駆動する原理は全然違うものかもしれない。( scanning every ATOM on the earth)

そういう意味で、YOUTUBEを買った目的も、なによりYOUTUBEが保有している膨大な動画データが欲しかったという仮説は成り立たないか?優秀なボットをクロールさせなくても、放っておけば世界中のユーザーが世界中の動画を毎日勝手にどんどん投げ込んでくれる巨大なバケツを。世界中のリビングルームに散逸している動画アーカイブを労せずして集めると同時に、CGMも自由に投げ込んでもらう。テレビ局から抗議を受けて、いまはYOUTUBE上で公開していない動画だって、サーバーの中には残っているだろうし。

企業してのグーグルが、テキストサイトにおけるadsenseという大発明により成功したように、動画広告でも画期的な広告手法を開発して大もうけするかも知れない。だけど組織を動かしている本当の欲望は金もうけじゃなくて「情報フェチ」なんじゃないかと。

話は戻って、次の記事もグーグルのもつcompellingな力をうまく表現している。

「表面に見えているのは、あくまでもグーグルが選んだ“外向きの顔”に過ぎない。同社は、テーブルの下に磁石を隠し持っており、テーブルの上にある金属の球を操っているのだ。そして、磁石の存在が見えなければ、人々は球が勝手に転がっていると思い込んでしまうものなのだ」(レンセン氏)

 同氏の言葉を借りれば、グーグルが世界に向けて提示しているアプリケーションやサービスは金属の球、秘密にしているアーキテクチャが磁石ということになる。その磁石の部分こそが、グーグルの最大の強みであり、なおかつその詳細が外部から見えないからこそ、グーグルのビジネス戦略はきわめて分かりにくいのである。 (Web界の巨人「グーグル」の果てしなき野望

compellingという言葉がもともと両義的で、ポジティブでもありネガティブな意味ももつように、グーグルの巨大な磁石に自分たちがいつの間にか動かされていることについては、当然ユーザーの間で賛否両論が巻き起こる。梅田さんのエントリーに対する、コメントやはてブコメントを見ると、「奢れるもの久しからず。私ならYoutube買収がGoogle凋落のきっかけになるほうに賭けます」とか「みんなgoogleが大好き」とか、グーグルに対するイメージが見事に分裂していて面白い。

良い権力か悪い権力かはともかく、もはや強大な権力者になってしまったnon-stop trainのことは、もはや誰も無視できなくなった。ブログを眺めても一億総グーグル評論家みたいな状況になっている。再びessaさんいわく

20世紀の人文学が「核戦争」というテーマに取り憑かれていたように、21世紀に人文学というものの意味があるとしたら、「グーグル八分」を自分の言葉で語ることから逃げられない。

グーグル八分に限らずとも、21世紀の政治、経済、法律、テクノロジー、あらゆる分野において、インターネット政府たるグーグルを抜きに語ることはできなくなってしまった。

福島県知事じゃないけど、絶対的権力は絶対に腐敗する。今は「dont be evil」と無邪気に言っているネット政府のHAL化をいかに防ぐか?
長くなったので、また次回書きます。

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September 28, 2006

グーグルPTAの支配する秩序

グーグルが、「Dont be evil」(邪悪にならない)たろうしていることは知っていたけど、「Dont be immoral」(不道徳にならない)も志向しているとは知らなかった。

日本のグーグルはフィルターかけられてんだよ

日本語環境のグーグルでは、勝手にエログロ情報にフィルターがかかっていて、しかもその設定を変えられないデフォルト仕様になっているんだという。

実はグーグルが「教育ママ」だったとは、ユーザーにとっては、かなり失望的なことじゃないか?!

と、ここで紋切り型に権力者グーグルの横暴を批判するのは簡単だけど、考えてみるほど、この問題は奥が深いようだ。

とりあえず実際試してみると、衝撃的。
何て言うか、コンタクトを初めて装着した時に見えた世界というか。現実の世の中はもっと色彩豊かでギラギラしていたんだ!と発見をしたような感覚。

グーグルは検索に民主主義の原理をもちこんだと言うけれど、「無修正」のままの生の民主主義のもたらす結果は、恐ろしくエログロまみれなのだ。南国の島じゃ紫外線カットのサングラスをかけないと眩しすぎるように、普通に検索を使う場合には、生のままの検索結果を表示したのでは、ノイズが混ざりすぎて妥当性を損なうということで、フィルターをかけざるを得ないのだろう。

だけど、「グーグルは検索結果に手を加えず、真に民主的な結果を表示する」と無邪気に信じているユーザーにとっては、知らぬ間に「フィルターon」にされていたとは、裏切られた気がする。

ここでグーグルがやっていることは、「グーグル八分」とはちがう、もっとマイルドな形での制約だ(裏ワザを知ればユーザーが表示設定を変更できるという点で)。

グーグル八分の名付け親?のessaさんが、以前に「課題図書と呼んだ原理に似ていると思う。それに触発されて、自分は勝手にこれを「グーグルPTA」と呼んでみたい。

つまりグーグル八分が、学校からの退学・追放を意味する父権的権力だとすれば、グーグルPTAは、教育ママのごとく生徒に「道徳」を押しつけている。しかも生徒の知らない間に、了解もなしに。「何が道徳的に正しいことなのか」の議論も抜きに、勝手に学校環境の秩序を保っている。当たり前だけど、何が「エロい」かは時代や場所や人によって異なるし、何が「グロい」かも同じこと。価値観の押しつけは迷惑なだけだ。

といいつつ、また話が飛んで恐縮だけど、よく考えてみれば既存のマスコミだって同様のフィルターをかけている。

日本ではテレビも新聞も、戦場や事件現場の死体は絶対に映さない。
逆に映っちゃったら使えないから、わざと映らないように撮るし、映ったらカットする。
一種の社会的「タブー」が意識的にも無意識的にもフィルターとして働いている。

でも外国では、国によっては死体を映すことはタブーじゃない。
むしろ戦場には死体が転がっていて当たり前だし、逆に悲惨な光景をクリーニングした映像ばかりを見せることは、戦争の悲惨さを覆い隠し、見る人の戦争に対するイメージを歪ませる、とも言える。

既存メディアにせよ、グーグルにせよ、ご利用の際にはメディアリテラシーが必要と言えばそれまでだけど。

そもそもフィルターをoffにしたら、グーグルが真に民主的な検索結果を表示してくれるかというと、かなり疑問だし、結局すべてはグーグル様のさじ加減ということだ。

だったら実のところ人間なんて「見たいものしか見たくない」のだから、いっそフィルターをカスタマイズするサービスを提供してくれたらいいと思う。

googleが考える「今はやらない」あえて偏ったgoogle検索

例えば、現在中国で行わている「検閲(フィルタリング)付き」での検索サービス提供などは、将来的には、日本でも、エロゲサイトやゲームサイトにアクセスできなくする設定の「office専用googleデスクトップ」みたいなビジネスに派生する可能性があったり、googleをかなり深くまで知っている"どこかの企業"が、「キリスト教原理主義者向け検索」みたいなのをgoogle検索の結果を複数組み合わせたメタ検索システムとして作るかもしれない。
検閲ではなく、顧客の「ニーズに寄り添った」情報提供のカスタマイズと言えば
受け入れられる可能性は高いだろうなぁ。

というように、いろんな企業や組織や個人の価値観に合わせた、多様なフィルターを用意してくれた方が、最初から検索結果から余計なノイズをはじいてくれて便利な気がする。

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May 24, 2006

ようやく出ます「フラット化する世界」日本語版

mediologicさん経由で知ったけど、以前、「平らになりつつある世界で」という記事で紹介した、トマス・フリードマンの「THE WORLD IS FLAT」の待望の日本語版「フラット化する世界」が出るようです。上下巻、全800ページと大部なようだけど、必読ですよ。この人は文章は、さすがピューリツァー賞を三度も取っているだけあって、面白く読ませる力があるというか、キャッチーに引っかけるのがうまいです。

この本はアメリカではベストセラーになって大反響を呼び、ここによると、作者は”インターネットのオスカー”とも称されるWebby Awardsで、「PERSON OF THE YEAR」にも選ばれたそう。そういえばこないだのアエラでロッテの監督ボビーまで「読むべき本の一冊」に挙げてたっけ。

 


Amazon.co.jp:フラット化する世界(上): 本

Amazon.co.jp:フラット化する世界(下): 本

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April 01, 2006

またまたグーグル領土拡大?

前回の記事で、グーグルの事業ドメインを調べているときに、不思議に思っていたことがあって、テキストから始まってイメージやビデオとメディアの領域を広げていってるのに、なんでこの分野は欠落してるんだろうと思っていたんだけど、やっぱり何か画策しているようだ。

グーグル、音楽業界大物らとの会談へ

「Google Music」登場ですか!?
と思ったら「現時点では、われわれは音楽配信サービスを開始する予定はない」ということなので、itunesと競合するつもりはないのか?渡辺聡さんは、グーグルの最近の傾向から見て、

情報のマッチング(サーチ)のみから具体的に配信プラットフォームとして機能する場面が増えていることから(Base、Video)、音楽ファイルくらいなら配信まで踏み込んでくると考えたくなります。なんせ決済は既に持ってますし。

とみているようだけど。まあ普通に考えれば音楽だけミッシングリンクになる方が不自然な気がする。

それとこんな記事も

グーグルが遺伝子情報検索データベースを計画か

ついにグーグルネ申は、生命の神秘の解明にまで手を伸ばしてきましたか。その目的の一つとして

「個人の遺伝子に応じてカスタマイズされた医薬品が手に入る素晴らしい新世界の実現に力を貸すことだという」

という推測があるということは、個人個人の遺伝子情報まで収集しようということなのか?しかしどういう手段で?

例えば、わが日本国政府はこんな方法で、外国人プラス自国民の生体情報を集めようとしている。(「出入国審査をスムーズにするため」とか変な屁理屈をつけてるが、最初から治安維持に利用しようとしているのはミエミエ)

出入国の自動化ゲート…捜査に利用 入管が提供 (毎日)

 出入国審査をスムーズにするため政府が導入を予定している「自動化ゲート」を巡り、ゲート利用者となる日本人や特別永住者らの指紋情報が、犯罪捜査にも 利用されることが分かった。政府は「自動化ゲートで日本人や問題のない外国人の利便性が高まる」としているが、個人情報保護の観点から指紋情報の扱いが議 論になりそうだ。
 法務省によると、ゲートの利用希望者が提供した指紋情報は入国管理局のデータベースに保存され、「本人がゲートを利用する意思を有する間」は保有し続け る。警察などが犯罪捜査の証拠収集の一環として、捜査関係事項照会書に基づいて指紋の照合を求めてきた場合には、指紋情報を提供するという。

ところで、この読売の記事を見ると、もともとグーグル創業者のラリー・ペイジの夢は「検索技術を遺伝子の解明にいかすこと」だったっていうから、最初から想定の範囲内の話なのか。

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March 26, 2006

グーグルの領土拡大図

google_domain 世界中いや宇宙中の情報を網羅し尽くそうとするグーグルの欲望はすごいものがある。そのミッションの壮大さと同時に、スピード感もすごくて、斬新で新しいサービスが矢継ぎ早に公開される。一度頭を整理するために、彼らが領域を拡大していく様子を、[ストック/フロー]と[パブリック/プライベート]という切り口で図式化してみた。もちろん一枚の断面図でグーグルの全体像を把握できるわけはないのだけど、宇宙全体を浸すエーテルのように、いまやグーグルはあらゆる空間に浸透しつつある。

▼「ストックとフロー」
図の横軸にとったストックとフローは「過去と現在」という時間軸とほぼ同義で、いわば情報の鮮度。グーグルはブログサーチやニュースアグリゲーションを洗練させ、最新の情報をより早く反映させると同時に、図書館の倉庫の奥でカビの生えたような古文書のデジタル化も進めている(ブックサーチ)。地理情報(アース・マップ)というのは、基本的にはストックな情報だけど、それをベースにカトリーナの被災状況を重ね合わせたりと、フロー情報とのマッシュアップも可能な基盤になっている。

ウェブ上の情報が爆発的に増えているとはいえ、実空間にある膨大な情報はいまだアナログのまま放置されている。グーグルが支配領土を広げるにはアナログ情報のデジタル化が重要課題。そこで、ユーザーが情報を簡単にデジタル化してウェブ空間に投げ込めるようなツールを無料で公開して、情報のデジタル化を促進する。(Base、Blogger、PageCreatorなど)

▼「プライベートな奥の院へ」
たとえ情報がデジタル化されていても、ローカルPC内に留まっていてネット上にアップされていない情報や、ネット上にあっても「認証の扉」の奥に隠されているプライベートな情報、SNSのような閉鎖的なネットワーク内には、どんなに高性能なグーグルボット(巡回ロボット)も侵入できない。

そこで、ローカルPC内に格納されている情報を丸ごと吸い上げたり(デスクトップサーチ)、文書作成も直接グーグルのサーバーに保存してもらう(writely)。メールやIMや電話といった極私的なフロー情報も全部面倒を見るし(Gmail、Gtalk)、SNSに外から侵入できないなら、内側につくってしまう(Orkut)。また各ウェブページの「管理人室」に入れてもらうために、管理人にとって魅力的なツールを提供して(Analystics、WebAccelerator、Sitemaps)、管理人室の中にまで招き入れてもらう。

ユーザーがモバイルからネットに接続すれば、机の前にいる場合とちがって、ユーザーが今どこにいるかも把握できる。位置情報というのは広告にとって極めて重要な情報となり得るので、グーグルはモバイルでの地歩固めにも躍起だ。カリフォルニアで実験的に行っている、wifiを安全に利用するための「Secure Access」というサービスでは、ユーザーはグーグルのVPNを通じて通信を行うことになっているらしい。ここまで来たら、ユーザー行動は完全に丸裸状態だ。グーグルボットは今や、パブリックな大通りや広場だけでなく、我々の家の中や脳内まで自由に出入りしている。

グーグルが巧みなのは、プライバシー情報を入手する際に、ユーザーに全く抵抗を感じさせないことだ。貴重な個人情報を入手するには企業側が金を払ってもおかしくないのに、「サービスは無料です」とやることで、ユーザーの方がから飛びついて個人情報を差し出す。それに例えばGmailだったら驚くほどの大容量を与えたりと、サービスの度合いもけた違いなものを用意して。例えは悪いけど、貞操帯を強引に突破しようとするのでなく、相手から股を開かせてしまうワザのうまさ(笑)

そしてそれは、「Don't be evil」(邪悪にならない)という極めて繊細な信頼関係の上に成り立っている。ユーザーからの高信頼こそが、グーグルにとって最大の無形資産といえるし、そこが最大のアキレス腱ともなり得る。

なぜグーグルがそこまで支配領域を広げていくかというと、ビジネス的にみれば、彼らのメイン収益源が広告であり、領域を広げれば広げるほど、広告を載せるキャンバスも広がっていく。そこは民放テレビのCM枠や野球場の看板とかと違って限界がない。プライバシー侵害の懸念の指摘されようが、メールの中身を分析して、その横に関連する広告を表示したり、地図の上に広告を埋め込んだりと、広告枠はどんどん広がっていく。さらにユーザーの極めてプライベートな情報を把握することで、広告の妥当性の精度をとことんまで高めることができる。グーグルは、ユーザーの友人や恋人、さらにはユーザー自身よりもユーザーのことを深層心理まで含めて知り尽くしている。いずれ「グーグル・カウンセリング(心理分析)」なんてサービスさえ始まるかもしれない。

それに、グーグルというベスト&ブライテストなギーク集団は、なにか金儲けとは別の衝動によっても突き動かされているような気がする。ここまで巨大化してくると、「Don't be evil」という証紙一枚で信じ切っていいものかどうか、やや不安な気もしてくる。

googlebot

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March 13, 2006

WEB2.0の教科書

最近は Amazon中毒がさらに悪化して、毎日のように家に本が届く。本の置き場にも困るので、読み終えた本をマーケットプレイスに出品することも始めたんだけど、これがまた予想以上にサクサク売れて、けっこううれしい。それも50円とか二束三文で買い叩かれるブックオフに比べるとかなり高い値段で。でも500円位のために梱包したり発送したりするのは結構面倒なんだけど・・・

で、最近読んだ「WEB2.0 BOOK」は、梅田さんの「ウェブ進化論」に負けず劣らずの良書だった。

Web2.0 BOOK
Web2.0 BOOK 小川浩(サイボウズ株式会社) 後藤 康成(株式会社ネットエイジ)


Amazonで詳しく見る

「ウェブ進化論」が、「こちら側」にいる人の目を「あちら側」に向けさせる優れた啓蒙書だとすれば、この本は「あちら側」のことをもっと知りたいと思い立った人向けの格好の教科書といえそう。ウェブ進化論を読んでケツに火がついた人は、次にこれを読んで基礎知識を勉強してみたらどうでしょう。

「ロングテール」や「フォークソノミー」、「マッシュアップ」といったトレンドの重要キーワードから、「Ajax」とか[LAMP」、[Ruby on Rails」などの技術用語の解説まで、素人でもよく理解できるように説明されてて、基本を押さえた後の後半はGoogleやAmazonなどの成功しているWEB2.0企業を例に取り、最先端の業界動向が俯瞰できるようになっている。インデックスも充実しているので、事典として横に置いておく分にも便利そう。

ジャンルはちがうけど、「直観でわかる数学」という本も、目からウロコが連発の最高にいい本。「こういう本に学生時代に出会っていればなー」と後悔させられる本の1冊で、高校生とかは今のうちに絶対読んでおいた方がいい。数学で大事なのは、オペレーション(計算)ではなくて、世の中の事象を抽象化する視点のもち方なんだということがよく分かる。

作者の畑村さんは別の著書で、「『分かる』とは、自分の中に既にあるテンプレートと比較して一致すること」というようなことを書いていた。新しい知識というのは全く新しく脳に書き込まれるのではなくて、古い知識を組み合わせて理解しているのだと。

そう考えると、説明がうまい人というのは、
①テンプレートとテンプレートを結び付ける「比喩」が巧み
ということと、
②相手がどんなテンプレートをもっているのかを読み取る
という2つの要素を備えているということだ。

梅田さんはグーグルを理解させるのは大変だという苦労話をよく書いているが、新しすぎるものは既存のテンプレートに当てはまるものがないから、適切な比喩を探すのも大変だということだろう。それでも「ウェブ進化論」という本は、その点で見事に成功したから至極分かりやすく、ベストセラーにもなっているのだろう。自分も赤線だらけにしながら読み終えた。だけど、うちの親父がこの本を読んだとして、果たしてグーグルのすごさを理解できるだろうか・・・

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February 23, 2006

歴史アーカイブとしてのYouTube

前回触れたYouTubeに相変わらずハマっている。
そのなかで、若き日のスティーブ・ジョブズやビル・ゲイツの貴重なお宝映像をたくさん発掘した。素材としてはそれぞれ5分程度のもので、単発で見ても面白いのだが、こうして順を追って眺めていくと、ドラマチックな歴史の流れを感じ取ることができて、かなり感動的だ。

 大前研一氏は、キリスト生誕を境とした紀元前(B.C.)と紀元後(A.D.)になぞらえて、ウィンドウズが初めて発売された1985年を境に、それ以前をB.G.(before Gates),それ以後をA.G.(after Gates)に分けたが、ある世代以下にとっては、こうした”紀元前後”にあたるパソコンの黎明期というのは、もはや「歴史」の中の出来事である。そして「歴史はどんな小説よりも面白い」のだ。

最近はRSSの最新情報フローの洪水におぼれがちなので、たまにはこうした「その時歴史は動いた」を見るのもけっこう楽しい。


1984年 マッキントッシュが世に初めて送り出された時の映像

スティーブジョブスがめちゃ若い!
最初この映像を見たとき、マックをわざわざバッグに入れている意味が分からなかった。パソコンの黎明期の人々にとっては、これだけ高性能なコンピュータがこんな小さなバッグに入ることが恐ろしく衝撃的だった、ということは少し間をおいてからやっと気づいた。

そして、マッキントッシュ自身が話す言葉が印象深い。

I'd like to share with you a maxim I thought of the first time I met an IBM mainframe.
"NEVER TRUST A COMPUTER YOU CAN'T LIFT!"

みなさんに一つの格言を伝えたい。私が初めてIBMのメインフレームを見たときに思いついたものだ。「手で持ち上げられないコンピューターを信用するな!」

これが当時のマックのカタログらしい。興味深いのは、この中でマックへのソフト提供会社の一つとしてビルゲイツが写真入りで紹介されてる

If Macintosh has an extraordinary future ahead of it,It's because of the extraordinary people behind it

もしマッキントッシュに特別な未来があるとしたら、それはこうした特別な人々に陰で支えられているためだ。

この無邪気な賛辞の言葉が後にどれだけ皮肉なものに転じるかは、現代に生きる我々は皆知っている。

翌1985年 「陰」にいたはずのマイクロソフトはマックを思い切りパクったWindows 1.0を発売する。これは当時のテレビCMらしいが、同社現CEOのスティーブ・バルマー本人が登場してる。この人ってこんなエキセントリックだったの?

そしてマック発表時の得意げな態度とは打って変わり、Steve Jobsが負け惜しみのようにマイクロソフトを酷評するこの映像

They just have no taste.They don’t think of original idea.They don't bring much culture into their products.I have a problom with the fact they just make really third-rate products.

マイクロソフトにはテイストが全くない。彼らには独自のアイデアがないし、製品にカルチャーを吹き込んでいない。彼らは本当に3流の製品しか作っていない。

その後、今に続くマイクロソフト帝国の隆盛はご存じの通り

その間にも新たな破壊的イノベーション「インターネット」は産声を上げる(「インターネットが初めて取り上げられたニュース映像」とあるが年代不明)

1997年 いったんアップルを追放されたスティーブは倒産寸前に追い込まれた同社の建て直しのために復帰し、同年、電撃的なマイクロソフトとの提携を発表する(聴衆からの大ブーイングが笑える)。

Steve:Apple lives in an eco system.It needs help from other partners.It needs to help other partners.Relationships that are destructive don't help anybody in this industry as it is today.

スティーブ:アップルは共生システムの中で生きている。他のパートナーからの助けが必要だし、他のパートナーを助けないといけない。今日のような破滅的な関係はこの産業において誰のためにもならない。

Bill:Some of the most exciting work I've done in my career has been the work I have done with Steve on Macintosh. LISA has been a major milestone.It's very exciting to renew our commitment to the Macintosh.

ビル:自分のキャリアの中でも一番エキサイティングだった仕事は、スティーブと一緒にやったマッキントッシュだ。LISAは今でも偉大な記念碑となっている。また新たにマッキントッシュに関われることはとてもエキサイティングだ。

その後、アップルはipodの爆発的ヒットによって完全に蘇る(The very first iPod introduction)

そして今や、「パソコンで覇権を争った時代」は終わりを告げ、梅田さんの言う「あちら側」の世界に主戦場は移り、GOOGLEという新たなエンパイアが誕生した。

 

2015年? 去年話題になったEPIC 2015

この予言が当たるかどうかはたいして重要ではない。過去の少年マンガに描かれた未来予想図と同じように、2005年当時の人が未来をどのように夢想したかの痕跡が残るところに意味がある。

  

【注】
取り上げた映像にスティーブ・ジョブズが多いのは、自分がアップルファンなわけではなくて、単に彼の映像ばかりがやたら多いからだ。プレゼンがうまいのも理由の一つだろうが、常勝ビル・ゲイツとくらべて、栄光と挫折の間を激しく振幅するスティーブ・ジョブズの人生自体がどんなドラマよりもドラマチックなためだろう。

スティーブ・ジョブズ-偶像復活 スティーブ・ジョブズ-偶像復活
ジェフリー・S・ヤング ウィリアム・L・サイモン 井口 耕二

東洋経済新報社  2005-11-05
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November 19, 2005

Amazonと機械仕掛けのトルコ人(後編)

 Google BaseとかGoogleが立て続けにリリースする新サービスの陰に隠れてしまってか、ブログ上でもあまり活発に取り上げられていないようだが、Mechanical TurkというサービスもまさにWEB2.0的な、場合によってはかなり大化けしそうなポテンシャルをもっている気がする。

 このサービスは要するに、アマゾンというサイバー市場で、今後は本やCDと並んで「労働」という商品も陳列されるということだ。床屋とか道路工事とかリアルな仕事は無理にしても、オンラインで処理できるようなオフィスワークに関しては、誰でも簡単に世界中の労働者に向かって外注できるようになる。これは今も急速に伸びている海外アウトソーシングを一気にコモディティ化(だれでも簡単に利用できる)することであり、しかも1分でできるようなbitなサイズにまで作業を小分けして外注できるので、まさに「労働市場のロングテール」を実現するものだ(参考)

 従来、労働という商品は移民や出稼ぎという形で生身の人間が動く以外に国をまたいで移動することはなかったが、近年はITの進歩によって、ソフト開発とかコールセンターなどについては、海外アウトソーシングが急速に伸びており、アメリカでは「国内の職を奪うものだ」と政治問題化もしているようだ。

【海外アウトソーシングの現状の参考記事】

海外アウトソーシング:結局問題は何なのか?
資本主義、貿易、海外アウトソーシング
日本人として海外アウトソーシングに向き合うと
ITで変わる世界 変わらぬ日本
加速するサービス業の海外アウトソーシング

Mechanical Turkを体験したアメリカ人の間では「1回3セント?マクドナルドより安い時給の仕事を誰がやるか!」とブーイングが起きているようだが、梅田さんの言う「グーグル経済圏」においては、

それはフルタイムの安定した仕事に従事する「持てる者」の発想だ。グーグル経済圏に最も敏感に反応するのは「持たざるもの」である。学生時代に月二万円、三万円の家庭教師の仕事がどれほど意味あるものだったかを思い出そう。

ライバルは時給700円でも働く学生ばかりでない。われわれ先進国の高給取りな労働者と、時給70円で喜んで働く国の人々とが同じ巨大な土俵の上で戦わなくてはならなくなる。世界は平らになりつつあるのだ。1回3セントの給料が高いか安いかは、ボーダーレス化した労働マーケットが決めることだ。

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